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 労災保険の高次脳機能障害12級と14級の認定基準に違和感を覚える事案を扱ったことがあります。具体的には、画像上明らかな他覚的所見が認められるものの、残った障害は比較的軽微と思われるケースです。

 高次脳機能障害の等級は、労災保険の認定基準上、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4つの能力(4能力)の喪失の程度に着目して評価し、複数の障害が認められるときには、原則として障害の程度の最も重いものに着目して評価されます。

 そして、12級と14級の各認定基準は、下記のように定められています。

  認定基準
12級

「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12に該当する。

  4能力のいずれか1つ以上の能力が「多少失われている」ものが該当する。

14級

通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第14級の9とする。

  MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のため「わずかな能力喪失が認められている」ものが該当する。

 この認定基準からは、事故当初の画像上明らかな脳損傷(脳挫傷など)があり、重い高次脳機能障害があったものの、症状がよくなって症状固定の時点では4つの能力すべてについて「わずかに喪失」と主治医の先生が回答している場合、14級の認定でよいのか問題になり得ます。

 医師の回答上は、4つの能力すべてについて「多少喪失」よりも程度が軽い「わずかに喪失」に回答しているため、上記12級の基準は満たしていないことになります。しかし、画像により明らかな脳損傷が認められる場合には、上記14級の基準を満たしているとも言えません。

 このように、上記の認定基準では、症状固定時にも画像上明らかな脳損傷が残っているものの、高次脳機能障害の症状は比較的軽微な場合に、すっきり当てはまる等級がないことになります。

 労災保険の認定基準は基本的には、自覚症状主体の場合には14級、自覚症状を裏付ける画像所見等がある場合には12級以上を認定することを想定していると思いますので、能力喪失の程度についてあらためて十分に精査し、他の障害の認定基準との整合性・脳の損傷という受傷内容の重さ・画像所見も勘案して、上記のようなケースでは12級が認定されるべきと思われます。

 なお、自賠責保険では高次脳機能障害の等級については、労災の認定基準に基づき認定される等級を参考にしつつ、独自の基準で認定していると思いますが、上記のケースでは9級の認定になると思われます。

 労働基準監督署に提出する診断書等の内容はとても重要ですので、できるだけ提出前にご家族等にご確認いただくことも大切になります。

(平成28年7月1日作成)

【関連ページ】

◇治療先と後遺障害等級認定

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