派遣労働者の方が派遣先で業務中に労働災害にあって受傷した場合、派遣元と派遣先のどちらに、どのような請求ができるのか分かりにくいところがあります。
下記では、派遣元・派遣先の義務等について、基礎的な事項をまとめています。
1.派遣労働者とは
派遣労働者は、派遣元(派遣会社)に雇用されて賃金を受け取り、仕事に関しては派遣元と労働者派遣契約を結んだ派遣先での指揮・命令に基づき行う、という形をとります。
派遣労働に関しては、労働者派遣法により、派遣労働者の定義を含め、様々なことが定められています。
2.派遣元の義務等
派遣元は、派遣労働者の雇用主ですので、労働基準法・労働安全衛生法・労働契約法等の法律や雇用契約に基づき様々な義務・責任等が発生します。労災保険に加入する義務も、雇用主である派遣元にあります。
このため、派遣先で事故が発生した場合には、派遣元の労災保険に申請することができます。派遣元はその管轄する労働基準監督署に労働者死傷病報告を行う必要があります。
3.派遣先の義務等
派遣先は、派遣労働者と直接の契約関係にありませんが、派遣元との労働者派遣契約に基づいて、業務の指揮・命令を行う立場にあります。このため、派遣先にも、労働基準法や労働安全衛生法等の法律の一部が適用され、様々な義務・責任等が発生します(派遣労働者に対する安全配慮義務も発生するとされています)。
派遣労働者が業務中に労働災害が発生した場合には、派遣先を管轄する労働基準監督署に労働者死傷病報告を行う必要があるとともに、その写しを派遣元に送付する必要があります。
労災保険については派遣元を管轄する労働基準監督署に手続きを行いますが、民事上の賠償責任は派遣先にも発生することがあります。
4.まとめ
派遣先で業務中に労働災害にあってしまいお怪我をした場合、派遣元の労災保険に申請をして治療費や休業補償を受けることになります。しかし、労災保険からの支給には一定の限度があります(休業補償は100%ではなく、慰謝料は支給されないなど)。
このため、派遣先・派遣元では任意に保険会社の労災保険に加入していることがありますので、まずは保険加入の有無の確認が必要になります。もし任意の労災保険に加入していない場合には、派遣先・派遣元に民事上の賠償請求ができることがあります。
ただ民事上の賠償請求では、労災保険では適用されない過失相殺が適用されますので、派遣労働者の方の過失の有無・大きさによっては、実際の損害額が労災保険からの支給額を上回らないこともあり得ます。
賠償請求のために会社側とやりとりを行う見込みのときには、お早めに労災を扱っている弁護士の方に準備しておくべきことや今後の見通し等について確認・相談しておく必要が出てくることがあります。
(平成27年10月30日作成)
【参考ホームページ】
◇派遣労働者の安全衛生対策について(厚生労働省ホームページ)
【関連ページ】