交通事故では、頭部や頚部の受傷後にめまいの症状が現れて、後遺症として残ってしまうことがあります。
ここでは、めまいの基礎知識についてまとめています。
1.めまいの症状
めまいの症状は、回転性めまいと非回転性めまいに大きく分けられます。
(1)回転性めまい
回転性めまいは、天井や周囲の景色がぐるぐる回るめまいを言います。回転性めまいには、めまいだけを訴えるケース、難聴や頭痛を伴うケースなどがあります。
末梢性の障害(内耳・前庭神経の病変)によることが多いとされています。
(2)非回転性めまい
非回転性めまいは、自分の体がふわふわ不安定になったり、眼の前が真っ暗になったりするものです。
中枢性の障害(脳幹・大脳・小脳の病変)によることが多いとされています。
2.診断・検査
(1)診察
診察の際には、診察室の椅子に座るまでの状況、意識障害があるかどうか、急に現れためまいかどうか、ぐるぐる回るめまいか、難聴や頭痛はないかなどが確認されます。意識障害の疑いがある場合には専門医療機関に依頼・搬送されます。
(2)検査
検査は、一般的な視診、触診、体温、脈拍、血圧、呼吸、精神状態などの確認、画像検査、聴力検査などが行われます。
めまいの検査としては、主に偏き検査と眼振検査があります。
①偏き検査
偏き検査は、四肢・体幹の平衡機能に関する検査です。
(a)上肢の偏き検査
指示検査、遮眼書字検査があります。
(b)下肢の偏き検査
歩行検査、足踏み検査、直立検査(Romberg検査、Mann検査、片足立ち(単脚直立検査)など)があります。
Romberg検査 | Mann検査 | 片足立ち検査 | |
検査内容 | 両足をそろえ、つま先を閉じて立たせ、開眼時と閉眼時の身体の揺れなどをみる。 | 両足を前後に縦一直線上に置いて立たせ、開眼時と閉眼時の身体のふらつきなどをみる。 | 開眼時、閉眼時に片足立ちをして身体のバランスをみる。 |
所見 | 著しい身体の揺れや転倒がある場合は異常。閉眼時に身体が大きく揺れる場合はRomberg現象陽性。 | 開眼、閉眼とも30秒以内に直立姿勢を取れなくなった場合は異常。 | 開眼で30秒以内、閉眼で10秒以内にふらついて足を床につけた場合は異常。 |
特徴等 | 深部位置覚の障害(脊髄の後根、後索に関する疾患など)で出現 | Romberg検査より敏感に脊髄性運動失調を検出可能 | 片足の筋力低下、運動失調があると片足立ちができない |
(b)誘発眼振検査
誘発眼振検査は感覚器官に刺激を加えて反射を起こさせる検査で、耳鼻咽喉科専門医が行う検査です。
内耳刺激負荷による検査(温度刺激検査、回転検査)、指標刺激で誘発される検査(視運動性眼振検査、指標追跡検査、急速眼球運動検査)などがあります。
3.主なめまい疾患
主なめまい疾患として、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、心因性めまい、頚性めまい、動揺病(乗り物酔い)などがあります。
頚性めまいは、頚部の疾患が原因となるめまいを総称するもので、大きく頚部交感神経異常(バレリュー症候群)、椎骨脳底動脈循環不全、頚項筋性めまいの3つに分けられます。
4.治療
意識障害を伴うような場合には専門医療機関に搬送・紹介されますが、その他の場合は対症療法が基本とされています。安静、吐気嘔吐による脱水状態に対する補液、回転性めまいに対する抗めまい薬、不安恐怖の症状に対する薬剤などが挙げられます。
このほか、平衡訓練、運動療法といったリハビリテーションも行われます。
5.後遺障害等級との関係
(1)認定基準
めまいの症状に関連する後遺障害認定基準は、下記のとおりです。
(2)認定される等級
めまいの症状が眼振その他の検査で異常が認められるときには12級以上の等級が認められます。自覚症状だけの場合には14級が認められる可能性があります。
(3)参考事例
①脳挫傷・外傷性くも膜下出血等による高次脳機能障害・めまい・嗅覚障害等について自賠責後遺障害併合8級が認定された事例
②脳挫傷・外傷性くも膜下出血等による高次脳機能障害・めまい・嗅覚障害等について労災障害等級11級から9級に変更された事例
③頭蓋骨骨折・頚椎骨折・鎖骨骨折等後のめまい・肩関節可動域制限等について自賠責後遺障害併合11級が認定された事例
④脳脊髄液減少症による高次脳機能障害などについて労災障害等級12級が認定された事例
【参考ホームページ】
【関連ページ】