交通事故では自賠責保険の後遺障害請求・異議申立などの手続きをする際に、これまで受診した病院の診療録(カルテ)を確認した方がよいことがあります。
ここでは診療録の基礎的なことをまとめています。
1.診療録・診療記録とは
診療録とは、医師が患者の診療内容、経過などを記載し記録保存する文書をいいます。
このほか、診療に関する諸記録として、処方箋、手術記録、看護記録、検査結果、画像データ、紹介状などがあり、これらと診療録を合わせて診療記録といいます。
日本ではカルテという場合、診療録をいう場合と診療記録をいう場合とがあります。外来カルテ、入院カルテという場合のカルテは、診療記録の意味で使われています。
2.関連する法律
診療録に関する法律として、医師法があります。
医師法では、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」(24条1項)、「病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。」(24条2項)と定められています。
3.診療録の意義、記載の原則
診療録は医師が行った医療行為の記録で、適切な治療等のためにとても重要とされています。また、医師が診断書を作成するうえでも重要な情報源とされています。
診療録の書き方として、SOAP方式が広く使用されています。
S : subjective … 患者の主訴、訴えなどの主観的情報
O : objective … 身体所見や検査所見などの客観的情報
A : assessment … 情報に基づく評価、分析、診断
P : plan … 治療方針や追加検査の計画
4.診療記録の入手について
診療記録(写し)は一般に、病院の窓口で所定の手続き、費用の支払いをすることで入手することができます。
5. 診療記録の入手の必要性
自賠責保険の後遺障害認定では、自覚症状の推移や医師の所見が重視されています。しかし、提出される診断書に、全てのことを十分に医師が記載していないことは珍しくなく、この場合、被害者の方に不利な等級認定がなされてしまうことがあります。
このような時には診療記録を入手して、医師の見解や被害者の方の訴えの内容などをよく確認することが大切と思われます。記録内容(医師の見解を含む)をよく確認したうえで医師に相談等を行えば、追加で診断書作成を依頼する際も、スムーズにお話しが進みやすくなると思われます。
(令和5年10月11日更新)
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