労災保険法では、保険給付などの決定に対して不服申し立て(審査請求・再審査請求)を行うことができることを定めています。
ここでは、労災保険の保険給付に関する不服申し立ての概要についてまとめています。
1.審査請求
保険給付の決定に不服がある場合には、審査請求を行うことができます。
(1)請求先
審査請求は、原処分をした行政庁の所在地を管轄する都道府県労働局に置かれた労働者災害補償保険審査官に対して行います。
(2)請求の期限
審査請求の期限は、審査請求人が原処分のあったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内とされています。
(3)請求手続き
審査請求は、文書または口頭で行うことができます。
(4)審査官の決定
労働者災害補償保険審査官が審理を終えたときは、原処分の一部もしくは全部を取り消し、または審査請求の一部もしくは全部を棄却する決定を、文書(決定書)をもって行うこととされています。
また、この決定書には、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができること、及び、再審査請求期間を記載しなければならないとされています。
なお、審査請求をした日から3ヶ月経過しても審査請求の決定がないときには、棄却したものとみなすができます。
2.再審査請求
審査請求の決定に不服がある場合には、再審査請求を行うことができます。
(1)請求先
再審査請求は、労働保険審査会に対して行います。
(2)請求の期限
再審査請求の期限は、審査請求の決定書の謄本が送達された日の翌日から起算して2ヶ月以内とされています。
(3)請求手続き
再審査請求は文書で行わなければならないとされています。
(4)審査会の裁決
労働保険審査会は、審理の期日と場所を決めて当事者等に通知し、原則として公開で審理が行われます。
当事者及びその代理人は、審理期日に出席して意見を述べることができます。
審査会が審理を終えたときは、原処分の一部もしくは全部を取り消し、または再審査請求の一部もしくは全部を棄却する裁決を、文書(裁決書)をもって行うこととされています(裁決書の送付は、審理終了から3ヶ月後が1つの目安とされているようです)。
なお、保険給付の処分の取り消しの訴えは、以前は再審査請求の裁決を受けた後でないと提起できませんでしたが、この取り扱いは変更されています。①審査請求に対する決定後6ヶ月以内、②審査請求して3ヶ月経過しても決定がない場合、③再審査請求に対する裁決前、④再審査請求の裁決後6ヶ月以内、のいずれかの場合にも訴えを提起できます。
3.結論の変更が認められた事例
(1)外傷性脳損傷による高次脳機能障害・抑うつ・てんかん等について労災障害等級12級から7級に変更された事例(審査請求)
(2)脳挫傷による物忘れ・てんかん等の高次脳機能障害について労災障害等級14級から9級に変更された事例(審査請求)
(3)脳挫傷・外傷性くも膜下出血等による高次脳機能障害・めまい・嗅覚障害等について労災障害等級11級から9級に変更された事例(審査請求)
(4)下肢デグロービング損傷後の足関節可動域制限・抑うつ等について労災障害等級7級に変更された事例(審査請求)
(5)手関節TFCC損傷による痛みについて労災障害等級14級から12級に変更された事例(審査請求)
4.留意点
労災保険の審査請求、再審査請求はともに難易度が高く、容易に結論は変わりません。特に、障害(補償)給付の再審査請求は難しい状況です。
できるだけ最初の請求時に適切な障害認定を受けられるようにするため、最初に労働基準監督署に請求する段階から、労基署の担当者とのやりとりや診断書を含む文書作成等について適切に対応することが大切になります。
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