交通事故によって椎間板ヘルニアそのものが生じることはあまり多くありませんが、交通事故をきっかけに、もとからあった椎間板ヘルニアによる症状が現れることはそれほど珍しいことではありません。
ここでは腰椎椎間板の構造と働き、腰椎椎間板ヘルニアの症状、治療、後遺障害等級との関係等について整理しています。
1.腰椎椎間板の構造と働き
腰の骨は、「腰椎」という5つの骨が重なって形成されています。椎間板はこの骨と骨との間にあって、腰が前後、左右に動いても上下の骨がずれないように、またクッションのような役割を果たしながら連結しています。
椎間板は、中心にゼラチン状の組織(髄核)があり、髄核の周囲を線維性の組織(線維輪)が年輪のように取り囲んでいます。髄核は水分を多く含むゲル状の物質でできており、線維輪は丈夫なコラーゲン線維からなる帯状のシートが何枚も重なった構造になっています。
神経根(高位) | 知覚障害 | 腱反射低下 | 筋力低下 |
L3 (L2-3間) | 大腿前面 | 膝蓋腱反射 | 大腿四頭筋 |
L4 (L3-4間 | 大腿前面ー下腿内側 | 膝蓋腱反射 | 大腿四頭筋前脛骨筋 |
L5 (L4-5間) | 下腿外側ー足背内側 | 正常 | 前脛骨筋、長母趾伸筋腓骨筋 |
S1 (L5-S1間) | 下腿後面−足外側 | アキレス腱反射 | 長母趾屈筋、腓腹筋 |
脊髄が圧迫された場合には、下肢の筋力低下や知覚障害のほか、歩行障害や排尿便の障害などさまざまな障害が現れることがあります。
椎間板ヘルニアの有無や場所(高位)は、基本的には、MRIという画像によって判断されます。このほか、下肢伸展挙上(SLR)テスト、ラセーグテスト、大腿神経伸張テスト(FNST)といった徒手的な検査が行われます。
4.腰椎椎間板ヘルニアの治療
治療は保存療法が原則とされており、多くの例では約1週間の安静臥床で改善が現れてくるとされます。鎮痛消炎剤、筋緊張弛緩剤、ビタミンB12の内服や神経根ブロック、硬膜外ブロックが行われます。手術治療は後方進入ヘルニア腫瘤摘出術(ラブ変法)が代表的なものとされています。
5.後遺障害等級との関係
(1)基本的考え方
基本的には、神経根症状の場合には12級の等級が、脊髄症状の場合には9級以上の等級が認定されますが、症状を裏付ける客観的な所見が認められない場合は14級の等級が認定されます。
(2)参考事例
①腰椎捻挫後の腰殿部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
②腰椎捻挫後の腰痛等の症状についてご夫婦ともに自賠責後遺障害14級が認定された事例
③頚椎捻挫後の頚部痛等、腰椎捻挫後の腰痛等について自賠責後遺障害併合14級が認定された事例
④腰椎捻挫後の腰痛について自賠責後遺障害14級9号が認定された事例
⑤腰椎捻挫後の腰痛について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
⑥頚椎・腰椎捻挫後の頚部痛・腰痛等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例
⑦腰椎椎間板ヘルニアによる下肢麻痺・痺れ等について労災障害等級10級から7級に変更された事例
【関連ページ】