労働者に発症した上肢の障害(上肢障害)が、業務災害として認められるかどうかの判断基準として「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準」 があります。
ここでは、認定基準の概要についてまとめています。
1. 上肢障害とは
腕や手を過度に使用することで、首から肩、腕、手、指にかけて炎症を起こしたり、関節や腱に異常をきたした状態を指します。
上肢障害の代表的な診断名には、次のようなものが挙げられます。
・回外(内)筋症候群
・手関節炎
・腱鞘炎
・書痙
2. 上肢障害の労災認定の要件
上肢障害が業務災害として労災認定されるためには、次の3つすべてを満たす必要があります。
(1)上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。
(2)発症前に過重な業務に就労したこと。
(3)過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること。
3. 用語の意味・解説
(1)「上肢等」
上肢等とは、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をいいます。
(2)「上肢等に負担のかかる作業」
上肢等に負担のかかる作業には、主に次のようなものが該当します。下記に類似した作業も該当することがあります。
①上肢の反復動作の多い作業
・パソコンなどでキーボード入力をする作業
・運搬・積み込み・積み卸し、冷凍魚の切断や解体
・製造業における機器などの組立て・仕上げ作業
・調理作業、手作り製パン、製菓作業、ミシン縫製、アイロンがけ、手話通訳
②上肢を上げた状態で行う作業
・天井など上方を対象とする作業
・流れ作業による塗装、溶接作業
③頸部、肩の動きが少なく姿勢が拘束される作業
・顕微鏡やルーペを使った検査作業
④上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
・保育・看護・介護作業
(3)「相当期間従事した」
原則として6か月程度以上従事し、発症直前3か月間に上肢等に負担のかかる作業を次のような状況で行った場合をいいます。
①業務量がほぼ一定している場合
同種の労働者(同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者)よりも10%以上業務量が多い日が3か月程度続いた
②業務量にばらつきがあるような場合
a. 1日の業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた(1か月間の業務量の総量が通常と同じでもよい)
b. 1日の労働時間の3分の1程度の時間に行う業務量が通常より 20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた(1日の平均では通常と同じでもよい)
(4)「過重な業務に就労した」
過重な業務に就労したか否かを判断するに当たっては、業務量だけでなく、次の状況も考慮されます。
・長時間作業、連続作業
・過度の緊張
・他律的かつ過度な作業ペース
・不適切な作業環境
・過大な重量負荷、力の発揮
4. まとめ
上肢障害として労災認定されるには、上肢等に負担のかかる作業に原則6ヶ月以上従事し、発症前3ヶ月間には過重な業務に就労したことが要件とされています。
腱鞘炎や手根管症候群などの上肢障害は、業務で起こることがありますので、上記1に記載の診断がなされ治療が必要なときは労災申請をご検討ください。
(令和6年3月1日更新)
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