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 自賠責保険の後遺障害等級認定に対して不満があり、異議申立を希望される方はたくさんいらっしゃいます。

  異議申立に至る要因として、後遺障害に該当しないと回答されたり、思っていたよりも低い等級を認定されたことが挙げられるのは当然ですが、さらにその要因として、担当医師が作成した診断書や回答書に被害者の方が思っていたよりも軽い症状で記載されていたり、訴えていたはずの症状や傷病名が記載されていなかった場合が挙げられますが、これらは特に珍しいことではありません。

 自賠責保険の後遺障害等級は、労災保険の認定基準に準拠して認定されますが、担当医師の作成する診断書や回答書に記載されていると等級が認められない方向に働く言葉がいくつもありますので、この言葉を材料にして後遺障害非該当とされたり、低めの等級が認定されることもあります。

 しかし、被害者の方は後遺障害等級認定の回答文書を見てはじめて、実際のご自分の症状と異なる記載がなされた診断書や回答書に基づいて等級認定されたことに気づくことがあります。

 このように被害者の方と担当医師との間で、症状の内容や程度等に認識のギャップがあることが異議申立につながることがあります。このようなギャップが生じないようにするには、可能でしたら残っている自覚症状をメモ等で担当医師に伝え、さらに作成された後遺障害診断書の内容を確認することが大切と思います。

  ただ、このようなギャップがあったことが事後的に分かることも多いですので、その際は弁護士や行政書士等にご相談いただき、できるだけ被害者の方と担当医師との認識のギャップを埋めていくことが大切と思います。

 一方で、自賠責保険の後遺障害等級認定は、第三者機関としての中立的な立場ということもありますが、「事故の解決」という視点がやや欠けていると感じることがあります。実際に被害者の方を診ている担当医師の所見と異なる認定をされることがあるときには特に、分かりやすい説明が回答文書にされないと、更なる異議申立や裁判につながることになります。

 また、後遺障害非該当と14級など判断がかなり微妙なケースもありますので、そのような事案については「事故の解決」や「被害者救済」といった観点から、被害者の方に有利な認定をしていただきたいです。

(令和5年9月22日更新)

 

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 交通事故でむち打ち症(頚椎捻挫)になり、長い間治療を続けても良くならないため、後遺障害の請求をしたところ、自賠責保険の後遺障害には該当しない旨の回答文書が届くことがあります。

 下記では、むち打ち症(頚椎捻挫)の後遺障害には該当しないと判断される場合の典型的な回答文書について分析しています。

 

1.典型的な回答文書の例

<結論>

 自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。

 

<理由>

 頚椎捻挫後の頚部痛については、提出の頚部画像上、本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず、また、後遺障害診断書上、自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しいことに加え、その他症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。

 また、頚椎部の運動障害については、前記画像所見のとおり、その原因となる骨折、脱臼等は認められないことから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。

 

2.回答文書の分析

(1)「提出の頚部画像上、本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず、また、後遺障害診断書上、自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しい」の部分について

 自賠責保険の回答文書の「理由」の部分は、最初に自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見が認められるか否かの検討結果について記されるのが一般的です。

 画像から骨折や脱臼などの外傷性の異常所見の有無がまず確認され、これらの所見がなくても、MRIで脊髄や神経根への圧迫所見など「自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見」が認められる場合には、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)など、12級以上の等級が認定される可能性が出てきます。

 しかし、「自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見」が提出の画像や診断書などから認められない場合には、12級以上の等級には該当しないということをここでは記しています。

(2)「その他症状経過、治療状況等も勘案した結果」の部分について

 この部分は、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)に該当するかどうかの検討結果になります。

 「症状経過」は、主に事故状況、受傷状況、診断書・診療報酬明細書の内容等から、どのような症状がいつ頃出現したのか、症状は良くなっているのか途中からあまり変わらないのか、今後の症状の見通しはどうなのか等が検討されると思います。

 「治療状況」は、入院の有無、治療期間、通院状況(通院日数、頻度等)、診断書・診療報酬明細書の内容(治療内容や治療効果等)等から、症状がどの程度の重さで推移していたか等が検討されると思います。

(3)「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」の部分について

 自賠責保険の後遺障害と認定されるには、「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」といえることが必要です。しかし、自賠責保険の後遺障害に該当しないという回答のほとんどが、この要件を満たさないと判断されている印象です。この判断は、主に上記(1)と(2)の検討に基づいて行われると思います。

 具体的には、上記(1)で客観的な外傷性の異常所見が認められないとしても、画像上ヘルニア等の所見が認められるかどうか、上記(2)で交通事故のとき強い衝撃を受け、一定期間適切に通院・治療を続けてきたものの症状がなかなかよくならず、医師も後遺症として残ってしまうことを認めているかどうかが主に検討されると思います。

(4)「頚椎部の運動障害については、前記画像所見のとおり、その原因となる骨折、脱臼等は認められない」の部分について

 むち打ち症では首の動きに制限が出ることがありますが、頚椎部の運動障害としてではなく、首の痛みの症状(神経症状)の中に含めて評価されると思います。

 頚椎部の運動障害は、自賠責保険の後遺障害認定で準拠している労災保険の認定基準上、8級以上の高い等級が定められていますので、骨折や脱臼など客観的な医学的所見の存在が求められてきます。 

 

3.留意点

 自賠責保険の回答文書の内容を理解することは、異議申立を行う際とても重要になります。異議申立では、最初の回答文書の内容を踏まえて対応していくことが必要だからです。

 回答文書の内容は抽象的で理解しづらいことがありますが、審査する側が後遺障害を認めないとした真意を回答文書と提出資料から発見し、それに対応する医師の所見がいただければ、異議申立で等級が変更されることは可能です。

 自賠責保険の後遺障害認定を受けましたら、一度専門家に回答内容の確認を求めることをお勧めします。

 

4.認定が変更された事例

(1)頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例

(2)頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例

(3)頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例

(4)頚部痛等について2回目の異議申立で自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例

(5)頚椎捻挫後の頚部痛・手のしびれ等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例

(6)頚椎捻挫後の頚部痛、両上肢痺れ等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例

 

(令和6年1月5日更新)

 

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