交通事故で受傷した場合に、どこで治療を受けるかとても大切になります。治療をどこで受けるかにより治療内容や回復状況に違いが出ることがあるだけでなく、後遺障害の等級認定や傷害慰謝料の額にも違いが出てくることがあるからです。このため、治療先はできるだけ慎重に選ぶことが大切になります。

 

１.後遺障害等級への影響

（1）治療先の選定

　自賠責保険における後遺障害の等級認定実務では、治療をどこで受けたのかがポイントになることがあります。具体的には、治療は病院で受けたのか、病院はどのような病院か、どの診療科か、治療は何をしたのか等です。

　この確認は損害保険料率算出機構の顧問医と事案の担当者が行います。顧問医の多くは大学病院・労災病院・国公立病院に勤めていますので、究極的には顧問医のいる病院でしっかり治療をしてもらい、それでもなお一定の症状が残ってしまった場合には後遺障害診断書を作成してもらい、その所見に基づいて後遺障害の等級認定を受けることが望ましいと言えます。

　しかし、実際には顧問医の治療を受けることは難しいため、症状が重い方や症状がなかなか回復せずに困っている方は、可能でしたら、大学病院・労災病院・国公立病院等の医療機関で治療を受けることが望ましいと思います。

　基本的には、上記のような病院で専門医による治療を受け続けて、それでもなお一定の症状が残ってしまった場合には、その障害に対して適切な後遺障害の等級認定をする必要がある、という考え方をしていると思われます。

　やむを得ず転医をされるときにも注意が必要です。転医されるまでに一定の期間があいてしまった場合には因果関係が認められなくなることがあり得ますし、転医先では最初から怪我の状態を診ていないので事故との関係等についてよく分からないと言われたりすることがあるからです。このため、転医されるときにはできるだけ紹介状があることが望ましいです。

 

（2）担当医師との信頼関係

　後遺障害の等級認定で重要な資料になる後遺障害診断書などの文書は、通常は担当医師に作成していただくことになります。

　治療当初から担当医師を信頼して、残っている症状や疑問点を過不足なく話し、できるだけ納得いく説明と適切な治療を受けることは、症状の回復だけでなく、保険会社等への提出書類を作成してもらう際も大切になってきます。

　ほとんどの医師は患者の方の症状回復を第一に考えてベストを尽くしていると思いますので、その医師の指示にしたがい適切な治療を十分に受けても一定の症状が残ってしまった場合には、しっかりした後遺障害診断書等の文書を作成していただける可能性が高いといえます。

　このように、医師との信頼関係は治療以外の場面でも大切になってくることがあります。

 

２.傷害慰謝料への影響

　自賠責保険における傷害慰謝料は、原則として、「1日4200円×治療期間の範囲内で実治療日数の2倍」で計算されます。

　しかし、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の施術を受けた場合については、「1日4200円×実施術日数」で計算されます。病院や整骨院等で治療･施術を受けた場合に比べて半分の額になります。

　ただ、できるだけ早く症状が回復することを優先すべきであり、鍼灸を試してみたいこともあるかと思います。その際も、担当医師の了解を得ておかれるのが望ましいです。

以上

（令和6年2月13日更新）

 

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