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1. 示談とは

  示談とは、当事者の話し合いによって解決することをいいます。法律的には、和解(民法695条)という契約の一種にあたります。民法695条では、「和解は当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる」と定めており、当事者それぞれの譲歩が求められています。 

  示談がいったん成立すると、後になって変更することはできませんので注意が必要です。ただし、示談当時に予見することができない障害が示談成立後に後遺障害として認められた場合は、この後遺障害に関する損害は請求することが可能です(下記裁判例参照)。

  しかし、自賠責保険の実務上、示談成立後に後遺障害が残ったとして被害者請求するケースがよく見られましたが、後遺障害認定されることはかなり難しいといえます。このため、示談する際は、 後遺障害が残った場合は別途協議する旨の文言を入れておくことが大切です。

 

2.示談の相手方と解決方法

  被害者の損害賠償請求に関する話し合いの相手方としては、①加害者側の契約する任意保険会社(対人賠償保険)、②被害者側の契約する任意保険会社(人身傷害補償保険)、③加害者本人、の大きく3つに分けられます。

 状況に応じて、加害者側の契約する自賠責保険に被害者請求することも可能です。 

 

(1)相手方が加害者側の契約する任意保険会社(対人賠償保険)の場合

  加害者の過失が大きく、任意保険に加入している場合には、通常は加害者側の契約する任意保険会社が治療費や休業損害等について一括払を行います。治療が終了し、保険会社が提示する賠償額に納得した場合には、示談書または免責証書を取り交わし、賠償金を受け取って解決となります。 

  しかし、保険会社が提示する賠償額に納得できず、保険会社の担当者と交渉を続けても進展が見られない場合も多くあります。このような場合には、裁判所を利用した調停や訴訟という方法もありますが、交通事故紛争処理センターなどの公正・中立な機関を利用する方法もあります。ここでは弁護士等の専門家が無償で交通事故の相談、和解のあっせん、審査を行っています。

 交通事故紛争処理センターの概要は下記のとおりです。

①所在地

   東京本部、札幌支部、仙台支部、名古屋支部、大阪支部、広島支部、高松支部、福岡支部、さいたま相談室、金沢相談室

 

②手続対象外となる紛争

   −自転車の対歩行者・対自転車の事故による損害賠償に関する紛争 

   −搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険など、自分が契約している保険会社または共済

   組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争 

   −自賠責保険後遺障害の等級認定に関する紛争

 

③解決までの期間 

   人身事故:通常3〜5回、物損事故:通常2回と説明されています。  

 

④解決方法

(a) 和解のあっせん

  相談担当弁護士が、当事者から話を聞き、和解のためのあっ旋案をまとめ、書面または口頭で当事者に提示します。合意に至った場合には、示談書または免責証書を作成し、それに基づいて保険会社等で支払手続きがなされます。

 

(b) 審査会の審査

  相談担当弁護士が和解のあっ旋が不調と判断した場合、当事者のいずれか一方は、相談担当弁護士を経て、審査を申立てることができます。審査会の審査では、審査員が争点や事故の内容について当事者それぞれに説明を求め、双方の意見を聞きます。審査の結果、結論を示す裁定が行われます。被害者が裁定に同意した場合には、相手方である保険会社等は審査会の裁定を尊重することになっていますので、和解が成立します。裁定の内容に基づき、示談書または免責証書が作成され、それに基づいて保険会社等において支払手続が行われます。被害者が裁定に同意しない場合には、裁定に拘束力はありませんので、訴訟を提起するなどの必要が出てきます。

 

(2)相手方が被害者側の契約する任意保険会社(人身傷害補償保険)の場合

   被害者の方の過失が大きかったり、加害者が任意保険に加入していないような場合には、被害者側の契約する人身傷害補償保険に請求することになります。人身傷害補償保険は、被害者の方の過失の有無・程度にかかわらず、過失相殺することなく、約款に定める基準に従って、治療費、交通費、休業損害、慰謝料等の損害額を積算して支払いを行います。 

   最終的には、人身傷害補償保険を契約している保険会社との間で協定書や確認書といった書面を取り交わすことで解決しますが、人身傷害補償保険の保険金額が不十分などケースによっては、人身傷害補償保険からの支払いを受けた後に、加害者側に損害賠償請求することが必要なこともあります。このような場合には、人身傷害補償保険との書面を取り交わす際に、加害者に対する損害賠償請求権を放棄する条項が含まれていないことを確認する必要があります。

 

(3)相手方が加害者本人の場合

  加害者本人が任意保険に加入していなかったり、被害者の方も人身傷害補償保険に加入していないような場合には、加害者本人との間で話し合いをすることになります。話し合いがまとまれば、示談書を取り交わすことになりますが、示談書を取り交わしたからといって、相手方が約束を守って賠償してくれるとは限りません。

  このような状況に備えて、公証役場で公証人に示談書を「公正証書」にしてもらえば、裁判手続きを踏むことなく、相手方の財産に強制執行することができます。手続き・費用等は日本公証人連合会のホームページに説明されています。 

 

3.示談書の内容

  示談書には、事故の当事者の氏名、交通事故の年月日・時刻・場所・車両番号・事故状況、示談金額、支払時期・方法、精算条項(示談内容以外の請求はすべて放棄し、互いに債権債務がないことを確認する条項)、将来後遺障害が発生もしくは悪化した場合に別途協議する旨の条項などを記載します。

 上記のとおり、示談がいったん成立すると後になって変更することはできませんので注意が必要です。

 

【関連ページ】

◇解決へのプロセス(後遺障害が残った場合)

◇交通事故の損害賠償責任

【関連する裁判例】   ※印は裁判所ホームページにリンクしています

◇後遺症に対する示談の効力 ※

交通事故の示談のポイント

  相手保険会社の担当者または弁護士と示談交渉をしていてお困りのことはありませんか? 治療費の打ち切り、低い賠償額の提示をはじめ、保険会社の対応にお困りのことがあるかと思います。

  ここでは被害者の方が示談交渉を進める際の基本的なポイントをいくつかご紹介します。 

 

1. 保険会社は保険金支払をできるだけ抑えたい

 保険会社で示談交渉・保険金支払業務を担当していると、抑えられるのであれば保険金の支払をできるだけ抑えたいという心理状態になります。治療費の打ち切りや低い賠償額の提示を行うのはそのためです。保険会社側からすれば、それを当然の仕事として考えています。被害者の方としては、保険会社の担当者というのは基本的にこのような考え方をしていることを認識しておかれた方が良いです。

 

2. 保険会社の担当者は示談交渉・損害賠償のプロ

  保険会社の担当者は日ごろから示談交渉・損害賠償を専門に仕事をしているプロです。たまたま事故にあってしまった被害者の方と比べて明らかに豊富な経験・知識があります。このため保険会社の対応に疑問が生じた場合には、できれば書籍やインターネットで下調べして、まずは弁護士や行政書士等の無料相談を受けることをお勧めします。これにより疑問点や不安な点をある程度解消して示談交渉に臨むことができます。 

 

3. 保険会社の担当者と対等に話しをする 

 保険会社は基本的には保険金支払をできるだけ抑えたい思いがありますので、何もしないでいると相手保険会社の一方的なペースで終わってしまいかねません。もし疑問点や困っていることなどがあれば、さ細と思われることでも質問をしたり、言いたいことを主張することが大切です。また、少なくとも月に1回は保険会社の担当者と話しをして、症状や仕事・日常生活への支障の程度をできるだけ具体的に伝えて状況を理解してもらうことも大切です。

 

4. 示談交渉に行き詰まったら「第三者」に依頼する

 上記13を考慮しても交渉に行き詰まり、今後の展望が見えないことが起こります。例えば、賠償額が問題の場合、保険会社の基準等から提示額を超える賠償が困難となり、被害者の方の希望額と大きな差が生じることがあります。そのような場合には「第三者」に介在してもらうよりほかありません。これは、弁護士に示談交渉の依頼、交通事故紛争処理センターへの申立て、弁護士に裁判の依頼をする、といったことが挙げられます。どれがベストかは状況によって異なりますので、まずは弁護士等の無料相談を受けることをお勧めします

 

【関連情報・コラム】

◇休業損害の認定について

◇損害調査業務の活動指標

◇むち打ちの治療費打ち切り

◇一括払と自賠責保険

◇損害賠償額の算定基準

◇示談成立後の後遺障害(後遺症)の請求について

◇後遺症の請求方法-被害者請求と事前認定-

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