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1.全損とは

  損傷が著しく現在の修理技術水準では修理が不可能な場合(物理的全損)と、修理は可能だが修理費用が被害車両の事故前の時価額を上回る場合(経済的全損)をいいます。 

  時価額とは、事故車と同一の車種・年式・型式・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において要する価額をいいます。

  事故車がスクラップとして売却可能な場合には、損害額から控除されます。 

 

2.時価額の認定方法(一例)

  時価額は、車検証で年式・型式を確認して、「自動車価格月報」(通称レッドブック。オートガイド社)の中古車価格を目安に認定されます。

  レッドブックに記載がない、中古車市場価値のない車両については、新車価格の10%を目安に認定されます。

  もっとも、インターネット等の中古車情報をもとに、事故車と類似した条件の中古車の販売価格の平均から時価額が算定されることもありますので、算定の根拠を確認することが必要です。 

 

3.登録手続関係費

  全損のため、新たに車両(新車または中古車)を購入する場合には、購入に必要となる次の費用が認定されます。

○自動車取得税…自動車取得者に対して取得価額を基準として課されるものです。買い替えによる還付制度はなく、損害と認められます。

○自動車重量税…自動車の重量・車検証の有効期間に応じて課されるもので、原則として新車購入時にかかります。買い替えによる還付制度はなく、新車購入の場合に損害と認められます。

○新規取得車両の消費税

○車庫証明・登録納車費用

○廃車費用

*自動車税、自賠責保険料は還付制度があり、損害とは認められません。

1.格落損害(評価損)とは

  事故後十分な修理をしても、修理後の車両価格が事故前の価格を下回ること、また修理しても完全に修復しえない外観・機能の欠陥を生じる損害をいいます。 

 

2.格落損害(評価損)の認定方法(一例)

  保険実務では、車種、年式、走行距離、損傷部位・程度、修理内容・金額、修理後の回復状態等を総合的に勘案し、修理費を基準として、その何%かを損害と認めます。 

 

3.保険実務上の取扱い

  格落損害は原則として認めないスタンスです。認定の目安としては、被害者の方に過失がないこと、自家用自動車で購入後間もないこと、損傷が部品交換できない骨格部分に及んでおり修理費が高額であること等が挙げられ、認定要件はかなり制限されています。

  事故前に車の買い替えのため下取りに出す予定で、下取り額が書面で明らかになっていたような場合には、この書面が格落損害の立証資料になることがあります。

 

【関連する裁判例】

 ◇評価損(格落損)

.代車損害とは

  事故のために車両が使用できなくなり、代車を使用したことによって生じた費用をいいます。 一般的には、レンタカー代金、公共交通機関を利用した場合の代替交通費、友人等に車を借りた場合の謝礼等があります。  

 

2.代車の必要性

  判例・保険実務上、代車損害が認められるのは、基本的には事故車を業務に使用していた場合です。レジャー目的や通勤通学での使用等の場合には、保険実務上、代車の必要性等について慎重な対応がなされます。

 

3.代車のクラス

  保険実務では通常、事故車よりも下位の車種の代車が手配されます。判例では、事故車が高級外車の場合、国産高級車の代車料を限度として認めています。 

 

4.代車の使用期間

  修理が可能な場合には修理に相当な期間、買い替えが必要な場合には買い替えに必要な期間が基準となります。

1.休車損害とは  

  事故によってタクシー、トラック等の営業車が使用できない間、当該車両が稼動していたならば得られたであろう利益の損失をいいます。 

 

2.休車損害の認定方法

  予備車・遊休車の有無や稼働率等が確認されます。予備車・遊休車がある場合には、原則として損害は認められません。認定される場合には1日あたりの認定額の目安が設けられており、これに休車期間を乗じて認定されます。休車期間は、修理相当期間、全損の場合には買い替えに必要な期間が基準となります。

 判例・保険実務のいずれにおいても認定されることはほとんどありません。

 新車への買い替え請求については、修理可能な場合は修理費を、修理不可能な場合には時価額の賠償を求められます。

 全塗装請求についても、標準的な修理方法による修理費の賠償を求められます。また現在の技術水準では部分塗装の結果美観を損ねることはないとの説明がなされます。

 

【関連コラム】

 ◇物損修理費の認定払いについて

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