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損害賠償の制度は、被害者の方に発生した損害を加害者側に金銭で賠償させるというものです。しかし、被害者の方に発生した損害のすべてが賠償されず、損害賠償額から一定の割合・額が減額されることもあります。損害賠償額が減額される事由の1つが過失相殺です。
ここでは、交通事故における過失相殺のポイントをまとめています。
1.過失相殺とは
過失相殺は、損害の公平な分担という観点から、被害者の過失を考慮して加害者の賠償額を減額する制度です。例えば、被害者の全体の損害額が1000万円で、被害者の過失割合が40%と認定された場合には、被害者は加害者に600万円しか請求できなくなります。このため、被害者の過失割合は賠償額に大きな影響を与えることになります。
2.交通事故における過失割合認定の基準
交通事故における過失相殺は、実務上(裁判所、弁護士、保険会社等)、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 別冊判例タイムズ第16号」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に基づいて被害者と加害者の過失割合を認定して行っています。
この基準は、「第1 歩行者と四輪車・単車との事故」、「第2 四輪車同士の事故」、「第3 単車と四輪車との事故」、「第4 自転車と四輪車・単車との事故」、「第5 高速道路上の事故」から構成されており、273の事故形態別に基本となる過失割合と修正要素が記載されています。例えば、交差点に直進四輪車と右折四輪車がともに青信号で進入して衝突した場合、基本となる過失割合は、「直進20:右折80」とされています。修正要素として右折車に「合図なし」、「徐行なし」等が定められており、これに該当する場合は直進車の過失が10%減らされるといった具合に適用されます。
このため、まずは実際の事故形態が判例タイムズのどの図に該当するのか検討することが過失割合の交渉を進めていくときに重要になります。適用する図が異なれば、基本となる過失割合はもちろん修正要素にも違いが出てきますので注意が必要です。事故形態を特定するにあたっては、警察の作成する実況見分調書がもっとも重視されます。これは保険会社が弁護士を通じて取り寄せて過失割合を検討することがありますが、被害者の方も事故を扱った警察に送致日・送致番号・送致先検察庁を問い合わせて、送致先検察庁で謄写・閲覧することが可能です。
<別冊判例タイムズで使用されている用語の意味(抜粋)>
(1)道路に関する主な用語
◇路側帯 ◇路肩 ◇横断歩道 ◇横断歩道上、横断歩道の直近、横断歩道の付近
(2)行為主体等に関する主な用語
(3)運転態様に関する主な用語
◇駐車 ◇停車 ◇徐行 ◇減速 ◇一時停止 ◇早回り右折、大回り右折
(4)その他修正要素として用いられる主な用語
3.過失相殺の方法
(1)任意保険
任意対人賠償保険(一括払)では、認定された過失割合に基づいて厳格に過失相殺が行われます。ただし、過失相殺の結果、自賠責保険の認定額を下回る賠償をすることはできません。
例えば、被害者の過失が30%、損害額が自賠責保険の基準で80万円、任意保険の基準で100万円の場合には、自賠責保険では下記のとおり被害者の方に重大な過失(7割以上の過失)が認められなければ減額されませんので、80万円全額が認定されることになりますが、任意保険では100万円×70%=70万円となり、自賠責保険の認定額を下回ってしまいますので、80万円が賠償額となります。
(2)自賠責保険
自賠責保険では被害者救済の観点から、被害者に7割以上の過失が認められる場合に、「重大な過失による減額」(重過失減額)として賠償額が減額されることになっています。重過失減額が適用される過失割合と減額割合は下表のとおりです。
自賠責保険における重過失減額は、損害額が保険金額(死亡は3000万円、後遺障害は1級4000万円〜14級75万円、傷害は120万円)に満たない場合は損害額から減額が行われ、損害額が保険金額以上となる場合は保険金額から減額が行われます。ただし、傷害による損害額が20万円未満の場合は減額されず、また、減額した結果20万円以下となる場合は20万円が認められます。
【自賠責保険の重過失減額】
被害者の過失割合 | 減額割合 | |
後遺障害または死亡 | 傷害 | |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
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