頚椎の経年性変化(加齢変化)の基礎知識
交通事故でむち打ち症(頚椎捻挫)の受傷をしたときに、事故前からの元々の頚椎の状態が、現れる症状の内容・程度・経過等に影響を与えることがあります。
ここでは、頚椎の経年性変化(加齢変化)の基礎知識についてまとめています。
1.頚椎の経年性変化とは
歳をとるとともに体には様々な変化が出てきますが、頚椎にも加齢による変化が現れます。頚椎の場合、椎間板(の中心部にある髄核)の水分の減少が老化現象の引き金となります。
椎間板はこの水分の圧力によりショックアブソーバーの役割を果たしていますが、水分が減少するとバネの力が弱くなって椎間板(線維輪)に亀裂が生じ、上下の椎間の隙間を保てなくなり(椎間腔の減少)、そのために、頚が動くときに椎体のかみあわせ部分が擦れるようになり、その反応で擦れ合う場所などに骨の棘状の出っぱり(骨棘)が現れます。
椎間腔の減少や骨棘は、神経根の通る椎間孔を狭くするため、神経根を圧迫することがあり、その程度が強いと神経根症状が現れます。また、椎骨動脈に血流不全を起こすこともあり、この場合には、めまい・耳鳴り・頭重感といったバレー・ルー(バレリュー)症候群の症状が現れることがあります。
2.頚椎の老化の生じる年齢
椎間板の水分の減少は、25歳過ぎから生じてくると言われています。これより若い人でも、頚椎に大きな力がかかる仕事やスポーツ(ラグビーなど)をしているような場合には、老化が生じることがあります。
3.頚椎の老化の起こりやすい場所
頚椎の老化は、頚椎がよく動くところが多く発生します。頚椎は第5頚椎と第6頚椎の間で最もよく動き、次に第6頚椎と第7頚椎の間、第4頚椎と第5頚椎の間で動くため、これらの場所で老化が多く現れます。
4.頚椎の老化の確認方法
頚椎(椎間板)の老化の有無や程度は、レントゲン写真で確認できます。レントゲン写真には、椎間板自体は写らないため、骨と骨の配列の状態などを見ることで、椎間腔の減少、生理的前弯の異常、頚椎不安定性、骨棘などから、間接的に分かります。
5.事故と頚椎の老化との関係
頚椎の老化のためにもともと神経や血管などが圧迫・損傷を受けやすい状態(元々圧迫していても無症状のことも少なくありません)で事故にあいますと、しびれなどの症状が現れてしまい、なかなか治りにくいことがあります。
頚椎の老化が事故で現れた症状にどの程度影響しているのかの医学的な判断は、実際のところとても難しいと言われています。
6. 頚椎捻挫の後遺障害認定事例
◇自転車同士の事故での頚椎捻挫について人身傷害保険から12級13号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛・上肢痛等について自賠責後遺障害併合12級が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚部痛等について2回目の異議申立で自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫の症状について異時共同不法行為で自賠責後遺障害14級9号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害14級9号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛・手のしびれ等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛、両上肢痺れ等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例
【関連ページ】
◇むち打ち症・脊髄損傷等の検査(画像・神経学的検査)の基礎知識