むち打ち症(頚椎捻挫)の後遺障害請求のポイント
交通事故による自賠責保険の後遺障害等級認定実務は書面審査になりますので、保険会社に提出する診断書等医師の作成する書類の内容は特に重要になります。
特にむち打ち症(頚椎捻挫)の後遺障害請求では、診断書等に後遺障害が認められにくくなるような記載がありますと、実際には事故の症状で苦しんでいる場合でも、自賠責保険の後遺障害として認められないことがあります。
実際に事故の後遺症で苦しんでいる被害者の方からすると、揚げ足を取られているようにも感じられるかもしれませんが、特にむち打ち症では後遺障害請求をされる方が非常に多く、すべての方に対して後遺障害認定できないことが主な要因と考えられますので、出来るだけ不利な扱いを受けないようにする対応も大切になります。
後遺障害が認められにくくなる主な所見や治療状況として、下記が挙げられます。
- 後遺障害診断書の自覚症状が、痛みがあるのに「違和感」などと軽めに書かれている
- 後遺障害診断書の予後所見が「回復の見込みあり」などと書かれている
- 診断書の傷病名・症状が一貫していない(途中から新たな傷病名や症状が現れている場合など)
- 診断書に、症状が軽減していることが書かれている
- 治療先が接骨院中心になっている
- 治療を受けていない期間が何ヶ月もある
- 通院日数(通院頻度)が少ない
上記のような不利な扱いを受けないようにするには、事故当初に受診した病院(整形外科)に通い続けることも方法の一つと思います。診察のときに医師の考えや説明内容等(むち打ち症に対する考え、画像所見、症状の見通し等)を覚えておくことも、医師に診断書作成等を依頼するときに役立つことがあります。
また、事故後半年ほどの段階であまり症状が良くなりそうもなければ、治すための治療から後遺障害認定を意識した治療に考えを切り替えることも大切になるように思います。例えば、ご自身の希望する接骨院中心の治療(施術)は、治すのに適した治療と言えるかもしれませんが、後遺障害認定に有利になる治療とは言い難いです。
このように、むち打ち症に限りませんが、被害者の方にとって有利になる可能性のある所見等だけでなく、不利になる可能性のある所見等を把握しておくことも、後遺障害請求や異議申し立てをするうえで大切になります。
(平成26年5月20日作成、令和5年7月26日改訂)
【取扱事例】
◇自転車同士の事故での頚椎捻挫について人身傷害保険から12級13号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛・上肢痛等について自賠責後遺障害併合12級が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚部痛等について2回目の異議申立で自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫の症状について異時共同不法行為で自賠責後遺障害14級9号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛等について自賠責後遺障害14級9号が認定された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛・手のしびれ等について自賠責後遺障害非該当から14級9号に変更された事例
◇頚椎捻挫後の頚部痛、両上肢痺れ等について自賠責後遺障害非該当から14級に変更された事例
【関連ページ】
◇むち打ち症(頚椎捻挫)の後遺障害回答文書の分析(非該当のケース)