労災事故発生時の会社(事業主)の義務について
労災事故(主に業務災害)が発生した際に、会社(事業主)は被災した労働者や労働基準監督署に対して一定のことを行う必要が出てくることがあります。
ここでは、会社(事業主)が労災事故発生の際に行うべきことについてまとめています。
1.被災労働者への補償
労働者が労災事故(業務災害)にあった場合、事業主は労働基準法に基づく補償を被災労働者に行う必要があります(通勤災害では労働基準法に基づく補償は求められていません)。
しかし、事業主が労災保険に加入している場合には、労働基準法に基づく補償を行う必要はなく、労災保険から給付がなされます。
ただ、労働者の休業1〜3日目の休業補償については、労災保険からは待期期間として給付されないため、業務災害の場合には、事業主は労働基準法で定める平均賃金の60%を直接労働者に支払う必要があります。
2.労災死傷病報告の届出(通勤災害を除く)
事業者は、労働災害等により労働者が死亡または休業した場合には、遅滞なく、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に届出する必要があります(派遣労働者の場合はこちら)。
具体的には、労働者が、①労働災害により、②就業中に、③事業場内又はその附属建設物内で、または④事業の附属寄宿舎内で(これら①〜④のいずれかのため)、負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したときに届出の必要が生じます(労働安全衛生規則第97条)。
この届出を怠った場合、虚偽の届出を行なった場合または出頭しなかった場合には、50万円以下の罰金刑が課せられるとされています(労働安全衛生法第100条、第120条)。
なお、労働者死傷病報告は、労働災害統計の作成、労働災害の原因分析、同種労働災害の再発防止策の検討などにも活用されています。
3.死亡災害・重大災害が発生した場合
死亡災害・重大災害が発生した場合には、通常、労働基準監督署により災害調査が実施されます。
災害調査の結果、労働安全衛生法違反の疑いが認められたときには、労働基準監督官が特別司法警察員として捜査(強制捜査を含みます)を行い、実況見分、供述調書の作成、送致等が行われます。
また、実際に労働災害が発生していない場合でも、同業他社で労働災害が発生したような場合や労働安全衛生法違反の申告があった場合などには、労働基準監督官によって、「臨検監督」が実施されることがあります。
臨検監督の結果、労働安全衛生法違反が認められた場合には是正勧告、また悪質性が認められる場合には労働安全衛生法違反被疑事件として立件されることがあります。
4.労災保険料への影響
労災事故で労災保険から給付された場合に、事業主が今後支払う労災保険料に影響が出ることがあります。
労災保険では、一定規模以上の事業について、個々の事業ごとにその事業の収支率に応じて、一定の範囲内で労災保険率または保険料額を上下させて、事業主の労働災害防止努力を促進しようとする制度が設けられています(メリット制といいます)。
労災保険を使っても、労災保険料に影響を受けない例として、下記が挙げられます。
・通勤災害による労災保険給付、二次健康診断等給付の支給額(業務災害のみ対象となります)
・継続事業で、常時20人未満の労働者を使用している事業
・有期事業の建設業で、確定保険料が40万円未満または請負金額が1億2000万円未満の場合
上記のメリット制が適用される具体的な要件、保険料の計算方法等は、労災保険情報センターの保険料のページをご参照ください。
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